[100人の保育士アンケートで発覚!] 保育士サービス残業の実態
2021年8月2日 掲載
保育業界は目に見えない残業が多い業種であり、サービス残業が常態化しているということが、
弊社がおこなった全国100人の保育士への調査で明らかになりました。
保育士の残業内容や、それらの解決方法についてみていきましょう。
目次
公式な保育士の残業時間データ
厚生労働省が発表した令和2年賃金構造基本統計調査によると、保育士の1ヶ月の平均残業時間は4.5時間となっており、1日あたり15分未満という結果になっています。
(出所: 厚生労働省「令和3年5月厚生労働省毎月勤労統計調査)
全業界の平均残業時間は9.2時間であるため、保育士の残業時間は平均を大幅に下回ってします。
リアルな保育士の残業
平均残業時間の実態
厚生労働省のデータでは1ヶ月あたり約4時間の平均残業時間でしたが、実際の残業時間はどのようになっているのでしょうか。
(出所:セルバ 保育士残業の実態調査)
約65%の保育士が週に5時間の残業をしていることが分かりました。
つまり、半数以上の保育士が月に約20時間の残業をしているのが実態となっています。
厚生労働省が公式に発表している残業時間の5倍の時間、リアルな現場では残業が発生しており、大きな乖離がみられます。
主な原因として「サービス残業」が多く発生していることがあげられます。
保育士はサービス残業なのか?
(出所:セルバ 保育士残業の実態調査)
求人広告には「残業代100%支給」との記載があることがほとんどでありますが、
約50%の保育士が残業代が100%支払われていないのが実態となっています。
これには3つの理由が挙げられます。
①残業代の上限額と設定している
上限額以上の残業代の支払いはないため、何時間残業してもサービス残業となってしまいます。
②みなし残業制で給与に手当が含まれている
みなし残業とは、賃金の中にあらかじめ一定時間分の残業代を含ませる制度で、「月〇〇時間分の残業代を含む」と記載しています。
みなし残業時間以上の残業をした場合は、さらに残業代を支払う義務がありますが100%払われていないのが実態です。
③子どもといる時間以外は残業として認めない
保育士の残業内容で一番多いのは、「日誌などのペーパーワーク・行事の制作準備」となっていますが、一部の保育園では子どもの保育時間以外は残業として認めていないため、サービス残業となってしまいます。
保育士が残業発生する理由
弊社のアンケート結果から、主に4つの理由が原因であることがわかりました。
①日誌などのペーパーワーク
保育士が残業せざるおえない原因の1つが、日誌などのペーパーワークです。園児と関わっている時間はこの作業を進めることができないため、園児が帰った後に残業して業務をこなす必要があります。
②行事の準備
お誕生日会や運動会など、毎月大きな行事がある保育園に勤務している保育士は、園児への指導に加えて制作物の作成などの業務が増えるため、残業が発生します。
③保育士の不足
保育園に所属している保育士が少ないと、一人あたり担当する業務が増えるため、残業が発生してしまいます。
④保護者のお迎えが遅い
共働き世帯の増加に伴い、延長保育時間を設けている保育園も増加していますが、保護者の仕事の都合で予定通りの時間に迎えにこられないということが多く発生しています。
そのため、保育士も保護者が迎えに来るまで待っておく必要があるため残業が発生してしまいます。
残業を減らすには
保育士の残業の実態が明らかになりましたが、これらを解決するにはどのような方法があるのでしょうか?
業務の効率化を図る
①タスク作成・共有をする
1週間単位で、やるべきことをリストアップし、どの時間に・誰が担当できるのかというのを、保育士全員で共有しましょう。
こうすることで、完了していること・していないことの「見える化」につながり、担当者自身の仕事の整理と、周りの職員が援助しやすくなります。
②業務ごとにめあす時間を設ける
装飾にかかる時間・書類を作成する時間・月案や週案の作成時間などを、あらかじめ〇〇時間で完了すると決めることがとても重要です。
業務の「見える化」によって自分の仕事の力量がわかるので、どのような業務を優先したら効率的に仕事をすることができるのか把握できます。
また、想定外の仕事が振られたときに慌てなくても業務を行うことができるようになります。
③お便り作成はテンプレートをつくっておく
作成頻度が高い「お便り」については、あらかじめ3〜5パターンのテンプレートを作成しておくと、作業効率があがります。
④ICTシステムの導入を検討する
ICTシステム導入により、作業時間の節約に繋がります。
具体的には、
・保護者との連絡がインターネット上で行えるため、手書きで連絡帳を書かなくてよくなる
・送迎バスやシフト管理を一括管理できる
といったメリットがあります。
導入には初期費用がかかるため、導入できるかというのは保育施設の判断になってしまいますが、月額5000円程度から導入できるものもあるので検討・提案してみましょう。
⑤他の園に転職する
保育士の残業には、行事の有無など保育園の環境要因が一番大きく関わっています。
アンケート調査の結果からも、「院内保育園・企業内保育園」に勤務している保育士は行事など準備に時間がかかる業務がないため、残業時間が他の保育施設より少ない傾向がみられました。
自分が働いている保育園の状況改善を待つよりも、保育士の残業が少ない保育施設に転職する方が
早く残業問題が解決するかもしれません。
まとめ
保育士の残業の実態は、サービス残業が蔓延していることがわかりました。
「保育士はこのスタイルが当たり前だから仕方ない」と思っていても、保育施設によって残業の捉え方や残業の有無など変わるので、自身の業務を見直すとともに、転職を考えてみるのも一つの道でしょう。